親子で創造力を育む!オンラインツールで始めるデジタルアート・デザイン
ご家庭で広がる「つくる」の世界:デジタルアート・デザインの第一歩
お子さまが絵を描いたり、何かを組み立てたり、新しいものを作り出すことに興味を持っている様子は、多くの保護者の方にとって嬉しい瞬間ではないでしょうか。近年、こうした「つくる」「表現する」ことの幅は、紙や粘土といった従来の素材だけでなく、デジタルの世界にも大きく広がっています。パソコンやタブレットを使ったデジタルアートやデザインは、子供たちの創造力を刺激し、新しい表現の可能性を開くものとして注目されています。
しかし、「デジタルアートやデザインと聞くと難しそう」「特別なツールが必要なのでは」「親に絵心がないから教えられない」といった不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。また、オンラインツールを使うこと自体に戸惑いがある方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、そうした保護者の方々に向けて、ご家庭でオンラインツールを使って、お子さまと一緒に無理なく、そして楽しくデジタルアート・デザインの世界に触れるための具体的な方法とヒントをご紹介します。はじめての方でも安心して取り組める内容を心がけておりますので、ぜひ参考になさってください。
STEAM教育における「アート(A)」の持つ意味
「はじめての遠隔STEAM」というサイト名にも含まれる「STEAM教育」は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの分野を横断的に学ぶことを目指す教育概念です。
この中で「A」はArtを指しますが、これは単に絵画や音楽といった芸術分野だけを指すのではなく、デザイン思考、創造性、表現力、批判的思考、文化理解といった幅広い意味を含んでいます。何かを作り出す過程で、美的な感覚や自由な発想を取り入れたり、多様な視点から物事を捉えたりする力は、科学や技術の分野においても非常に重要と考えられています。
デジタルアート・デザインに取り組むことは、このSTEAM教育における「A」、すなわち「創造性」や「表現力」、「デザイン思考」を育むための素晴らしい機会となり得ます。
家庭でデジタルアート・デザインに取り組むメリット
ご家庭でオンラインツールを利用してデジタルアート・デザインに触れることには、様々なメリットがあります。
- 手軽さと費用の抑制: 高価な画材や専門的な道具を揃える必要がありません。インターネットに接続されたパソコンやタブレットがあれば、多くの無料または安価なオンラインツールをすぐに始めることができます。
- 試行錯誤のしやすさ: デジタルなので、描いたものを簡単に消したり、色を変えたり、配置を調整したりと、何度でもやり直しが可能です。失敗を恐れずに自由にアイデアを試すことができます。
- 多様な表現方法: 手描きでは難しい、写真との合成、多様なフォントの使用、アニメーション、3Dモデリングなど、幅広い表現に挑戦できます。
- 作品の共有: 完成した作品をデジタルデータとして保存し、家族や友人と簡単に共有したり、印刷して飾ったりすることもできます。
- 親子のコミュニケーション: ツールを一緒に操作したり、「次はどうしようか?」と相談したりする中で、自然な形で親子のコミュニケーションが生まれます。
初心者向けオンラインツールの選び方
様々なオンラインツールがありますが、はじめてご家庭で取り組む際には、以下の点を考慮してツールを選ぶと良いでしょう。
- 操作のシンプルさ: 子供にとって直感的で、すぐに使い方を覚えられるような簡単なインターフェースのツールがおすすめです。
- 無料で利用できるか: まずはお試し感覚で始められる無料ツールから入るのが負担が少なく良いでしょう。
- 安全性: 子供向けに配慮されており、不適切な広告が表示されないか、個人情報の入力が必要ないかなどを確認します。
- 対象年齢に合っているか: 低年齢向けには、より視覚的で簡単な操作のツールが用意されています。お子さまの年齢や発達段階に合ったものを選びましょう。
具体的なツールとしては、以下のようなものが初心者の方におすすめです。
- オンラインお絵かきツール: Webブラウザ上で動作する、シンプルなペイントツールです。特別なインストールは不要で、インターネット検索で「オンラインお絵かき 無料」などと調べると様々なツールが見つかります。色鉛筆や絵の具のように自由に描く楽しさをデジタルで体験できます。
- Canva (キャンバ): デザイン作成ツールです。豊富なテンプレートが用意されており、写真、イラスト、テキストなどを組み合わせて、ポストカード、ポスター、プレゼンテーション資料などを簡単に作成できます。無料プランでも十分な機能があり、直感的な操作が可能です。
- Scratch Jr (スクラッチ ジュニア) / Scratch (スクラッチ): これらはプログラミング学習ツールとして有名ですが、キャラクターを動かしたり、背景を変えたりすることで、簡単なアニメーションやインタラクティブな絵本のような「動くアート」を制作できます。 Scratch Jrはタブレット向けのアプリで、就学前〜小学校低学年向けに非常に分かりやすく作られています。Scratchは主に小学校中学年〜向けで、Webブラウザ上で利用できます。ブロックを組み合わせてプログラムを作るため、視覚的に理解しやすいのが特徴です。
これらのツールは、それぞれ異なる得意分野を持っています。お子さまの興味や、どのようなものを作ってみたいかに合わせて選んでみてはいかがでしょうか。
親子で楽しむ具体的な活動例
それでは、ご家庭でオンラインツールを使ってデジタルアート・デザインに触れるための具体的な活動アイデアをいくつかご紹介します。特別な準備はほとんど必要ありません。
活動例1:オンラインお絵かきツールで「今日の気持ち」を描こう
- 準備: パソコンやタブレットで、お気に入りのオンラインお絵かきツールを開きます。
- 進め方:
- 「今日の気持ちを色や形で表現してみよう」と声をかけます。
- お子さまに自由に描かせます。親御さんも一緒に同じツールで描いてみると、共通の話題になります。
- 様々なブラシや色の使い方を一緒に試してみます。「このツールにはどんな色があるかな?」「線の太さを変えられるかな?」など、ツールの機能を探るのも楽しい活動です。
- 完成したら、描いた絵について話を聞いてみましょう。「どんな色を使っているの?」「この形は何を表しているのかな?」など、描いたものへの興味を示す声かけをします。
- ポイント: 完成度を求めず、自由に表現する楽しさを重視します。描いた絵を保存して、日々の成長を記録するのも良いでしょう。
活動例2:Canvaで「オリジナル誕生日カード」を作ろう
- 準備: CanvaのWebサイトを開き、無料アカウントを作成します(保護者の方が)。「カード」のテンプレートを探します。
- 進め方:
- 「おじいちゃん/おばあちゃんの誕生日カードをデジタルで作ってみよう」など、具体的な目標を設定します。
- 豊富なテンプレートの中から、お子さまが好きなデザインを選ばせます。
- 選んだテンプレートに、メッセージを入力したり、保存してあるお子さまの写真を追加したりします。
- 素材タブからイラストやスタンプを選んで配置してみましょう。背景の色を変えたり、文字のフォントを変えたりといった操作も、一緒に試しながら進めます。
- 完成したら、デジタルデータとして保存したり、自宅のプリンターで印刷したりして使います。
- ポイント: 身近なイベントをテーマにすることで、目的意識を持って楽しく取り組めます。デザインの構成要素(写真、文字、イラスト)に触れるきっかけになります。
活動例3:Scratch Jr / Scratchで「動く自分のキャラクター」を作ろう
- 準備: Scratch Jrアプリをタブレットにインストール、またはScratchのWebサイトをパソコンで開きます。
- 進め方:
- 「自分の分身となるキャラクターを画面の中で動かしてみよう」と提案します。
- Scratch Jr/Scratchのエディター機能を使って、オリジナルのキャラクターを描いてみます。または、用意されているキャラクターを使っても良いでしょう。
- ブロックプログラミングを使って、「右に動かす」「ジャンプする」「大きさを変える」といった簡単な動きをつけてみます。
- 背景を選んだり、他のキャラクターを追加したりして、簡単な物語や動きの連鎖を作っていくのも楽しいでしょう。
- ポイント: 描く楽しさと、その絵が自分の指示で動く驚き・面白さを体験できます。「こうしたい」というアイデアを、どうすれば実現できるかを考える、プログラミング的思考の基礎にも触れられます。
親ができるサポートと声かけ
お子さまがデジタルアート・デザインに取り組む上で、保護者の方は先生になる必要はありません。一緒に楽しむ姿勢が一番のサポートになります。
- 一緒に触ってみる: お子さまに使い方を教えるのではなく、「これどうやるんだろうね?」と一緒にツールを操作してみましょう。親が試行錯誤する姿を見せることも学びになります。
- 「やってみたい」を応援: お子さまが「こんなものを作りたい」「この機能を使ってみたい」と言ったら、まずはそれを実現できるようサポートします。親の期待するレベルに達しなくても問題ありません。
- プロセスを褒める: 完成した作品だけでなく、色々な機能を試したこと、難しそうな操作に挑戦したこと、最後までやり遂げたことなど、作る過程での努力や工夫した点を具体的に褒めましょう。
- 質問で興味を引き出す: 「どうしてこの色を選んだの?」「ここをこうするにはどうしたらいいかな?」など、お子さまが考えを深めたり、次の行動を決めたりするきっかけとなるような質問を投げかけてみましょう。
- 時間を決める: 画面時間の増加が気になる場合は、あらかじめ「今日はここまで」「〇時になったら終わりにしようね」など、お子さまと一緒にルールを決めておくのがおすすめです。
よくある疑問・不安への回答
- Q: 親にデザインや絵の知識が全くなくても大丈夫でしょうか?
- A: はい、全く問題ありません。ご紹介したツールの多くは直感的で、専門知識がなくても操作できます。大切なのは、お子さまの創造性を刺激し、一緒に楽しむことです。親御さんも「はじめて」という気持ちで、お子さまと一緒にツールの使い方を学び、自由に表現することを楽しんでみてはいかがでしょうか。
- Q: オンラインツールを使うと画面時間が増えないか心配です。
- A: ご心配されるのはもっともです。デジタルアート・デザインの時間だけでなく、他の遊びや学習とのバランスが大切です。活動時間を事前に決めたり、タイマーを使ったりするなどの工夫が考えられます。また、ただ漫然と画面を見るのではなく、「〇〇を作ってみよう」という目的を持って能動的に取り組む時間と位置づけることも有効です。
- Q: 子供に使わせるオンラインツールは安全でしょうか?
- A: 多くのオンラインツールがありますが、子供向けとされているものや、教育機関、信頼できる企業が提供しているものを選ぶと、より安全性が高いと考えられます。利用規約を確認したり、個人情報入力が必要ないかを確認したりすることも大切です。ご紹介したツールは、子供向けとしても実績のあるものですので、安心してご利用いただきやすいでしょう。
- Q: 子供がすぐに飽きてしまったり、興味を持たなかったりしたらどうすれば良いですか?
- A: 全てのお子さまがすぐに夢中になるわけではありません。無理強いせず、まずは短時間から始めてみましょう。お子さまの好きなもの(キャラクター、動物、乗り物など)をテーマにしたり、日常の出来事(今日の夕食、週末のお出かけ)を絵にしてみたりと、身近な題材から入るのも良い方法です。もしデジタルアート・デザインにあまり興味を示さないようであれば、他のSTEAM分野(オンラインプログラミング、科学シミュレーションなど)を試してみるのも一つの考え方です。
まとめ:創造力を育むデジタルアート・デザインの扉を開こう
ご家庭でオンラインツールを使ってデジタルアート・デザインに触れることは、お子さまの創造性や表現力を育む素晴らしい機会です。特別な才能や知識がなくても、手軽に始められるツールがたくさんあります。
まずは一歩踏み出し、お子さまと一緒にオンラインの世界で自由な発想を形にしてみましょう。描いて、消して、色を変えて、動かしてみて…。試行錯誤の過程そのものが学びとなり、何よりも親子で一緒に「つくる」時間を楽しむことが大切です。
この記事でご紹介した情報が、ご家庭での遠隔STEAM教育、特にデジタルアート・デザインへの第一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。